イベントレポート

挟田館跡 現地説明会レポート

平成29年5月20日(土)大槌町狭田館跡で現地説明会が行われました。記念すべき今年度1回目の現地説明会は、昨年度同様に中世城館の調査成果を公開することになりました。
狭田館跡の調査は、三陸沿岸道路の建設に伴う緊急発掘調査で昨年度に引き続き4月6日から行われています。
この日の大槌町は、雲一つない快晴で気温もグングン上がり27度。この時期の平均が20度前後ですので季節外れの暑さとなりました。
そんな中で参加してくださった50名のみなさまありがとうございました。
2ヵ年の調査で、調査範囲は急峻な切岸と腰曲輪で構成されていることがわかりました。切岸は、山を削り急斜面を人工的に作ったもの。腰曲輪は、斜面を平坦につくった小さなスペースのこと。緩い斜面に腰曲輪を段々に作ることにより急斜面の切岸が複数作られることになります。中世城館は、自然の地形をいかしながらも、敵に攻め入られないよう人工的に作られた防御施設のため、発掘調査は山に入り木を伐採し、急斜面から落ちないように注意しながら、城を攻略していくような作業となります。hasamadadateato01

現地説明会のはじまりです。まずは、調査の概要について、担当調査員からの説明です。後ろにそびえる急斜面が狭田館です。

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調査範囲に向かう途中に、なんと狭田館に関わる石碑を発見。石には、狭田館の館主と親族・配下等の霊を供養するため石にお経を書写したと刻まれています。天明3年(1783年江戸時代)に建てられた石碑は、確かにここに城があったことを物語っています。

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いざ、登ります。頂上までは、15分程。比高44㍍の軽い登山?のスタートです。運動不足の私は一抹の不安を抱きながらの入山です。

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黙々と登ります。曲輪や切岸の雰囲気を感じる現況地形を歩きながら気分が盛り上がります。この心臓の高鳴りは運動不足のせいではなく期待の表れだと思います。

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やっと調査範囲に到着、平坦部(腰曲輪)に立ち狭田館跡の南側にある大槌川を望みながら、説明を聞きます。オレンジのネットの向こう側は…。

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下から見上げた写真を見ると一目瞭然。オレンジのネットから一気に急斜面(切岸)となります。こんな迫力のある急斜面(切岸)を前にしたら敵兵も気力をなくしてしまいますね。

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頂部まで、まだ急斜面(切岸)を登ります。そして平坦部(腰曲輪)を歩きまた急斜面(切岸)…。現代の私達は、作業用に設置した階段を使います。が、それでもかなりの体力消耗。武装した敵兵が戦いながら登るのはもっと体力を消耗するでしょう。

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頂部にたどり着きました。頂部の平場(曲輪)は2段で構成され、低い方から建物があった痕跡である柱穴が見つかりました。しかし、居住の場はここではなく、調査範囲の東側と想定しているそうで、見つかった柱穴がどのような役割を果たしていた建物だったのか気になりますね。

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眼下に拡がるのは、住宅や商業施設ですが、当時も変わらず流れていた大槌川に目がとまります。川の対岸にある大槌城跡は、現在木々に隠れて見えませんが、当時は大槌川上流部や、海岸部からの侵入を連携し阻止する要衡であったと考えられます。

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頂上から見下ろすと、平坦部が段々と連なり腰曲輪を形成しているのがわかります。そして、この平坦部を作ることによって切岸も作られていったのです。上から見下ろすと絶壁の上に立っているかのような気持ちになりますね。

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今年度の調査では、15世紀の瀬戸産の卸皿(おろしざら)と花瓶(かびん)の破片が出土しています。

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同じく15世紀の中国産青磁器、16世紀の染付椀(そめつけわん)が出土しています。また、時代は違いますが、近世から近代のものと考えられる奉納用の宝剣も出土していることからこの時代に社(やしろ)や祠(ほこら)があった可能性を示しています。

 ご近所から参加された方が「重機やベルトコンベアーの無い時代に、こんなに立派な工事をしたなんて驚いた」と話して下さいました。狭田館の工事にどれくらいの人や日数がかかったのかは不明ですが、今回の発掘調査も同じように人力で作業が進められました。危険と隣り合わせの調査でしたが、地域の皆さまの御協力によって無事に調査を進めることができました。ありがとうございました。

当日資料は、こちらから

2017年5月29日掲載

※このホームページは公益財団法人岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センターが、調査した遺跡の情報を提供しています。 掲載されている情報の無断転載はできません。

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