現地説明会

太田林遺跡現地公開を開催しました。(11月23日)

11月23日(水・祝)釜石市の太田林遺跡で現地公開を行いました。

                         当日の資料はこちら

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太田林遺跡は、釜石市橋野町の駐在所のそばにあり、鵜住居から遠野市との境にある笛吹峠に向かう県道のわきに位置しています。橋野地区の消防屯所を作るために、調査を行うことになりました。
旧橋野小学校に車を止め、鵜住居川を渡ると遺跡です。この写真では右手に見える鉄塔の下あたりが調査区です。

 

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駐車場が近くになく、調査区も狭いことから、午前11時からと、午後1時30分からそれぞれ1時間を公開時間としました。
間もなく、11時。参加の方が集まってきました。

ここが調査区です。

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今回の調査では、縄文時代早期(およそ8,000年前)から前期末(およそ5,000年前)の竪穴住居がたくさん見つかっています。

今回は先ほど挙げた理由から、時間を決めて調査員の説明で一斉に見学するのではなく、自由に現場や遺物を見ていただき、控えている調査員に質問していただく形式にしました。

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このように住居や穴が密集しており、古い住居の壁が、新しい住居に壊されていたりします。一目ではわかりにくいので、渡された資料を見ながら確認していきます。

奥の調査区の壁を見ると、この場所が以前水田として使われていた時の黄色い土が上の方に水平に入っているのがわかります。その下に様々な遺構が重なっているようです。

 

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調査区の中央からやや東寄りの場所から、大きな穴が見つかりました。中を覗けるように、見学通路をすぐそばまで設けました。

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皆さん覗き込んで熱心にご覧になっていますね。何があるのでしょうか。

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穴の底になにやら黒っぽいものが見えます。
木の実のようにも見えますが・・・

穴の底から取り上げたものが展示されていました。

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クリのようです。イガや鬼皮のない状態で見つかりました。
穴はクリを保存していた貯蔵穴だったのでしょうか。

調査区際からは、やはり貯蔵穴とみられる、口が狭くて底が広い穴が見つかっています。

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深さ1.6mぐらい。かなり深いです。

また、調査員の立っている場所の左側からはお墓とみられる穴が見つかりました。

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見学の方から、
「なぜお墓と分かったのですか?骨が見つかったのですか?」
と質問がありました。

埋まっていた土を調べると、人が埋め戻したような状況であったこと、副葬品とみられる石製品が見つかったことからお墓と考えられます。 

なお、画像の中ほどに左右に延びる細い溝がありますが、大型住居の壁際に掘られた溝だそうです。調査員より向こう側に対になる溝もあるので、幅4m、長さ11mほどの細長い形だったのかなとわかります。

テントの下には、見つかった遺物が展示されています。
女性の皆さんの目を引いたのは・・・

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耳飾りの数々です。製作途中のものや、材料の石も見つかりました。完成品は割れてしまったものがほとんどですが、補修孔をあけて修理して使った跡が見られます。

この遺跡では耳飾りづくりを行っていたようです。
なめらかで、ちょっと緑がかったこれらの石が、どこで採れたものなのか今後調査を進めます。

土器も展示されています。

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左上が縄文時代早期の土器の底で、尖った形をしています。

他は縄文時代前期の土器です。外側に煤が付いていますね。左下の土器は内側におこげがたくさんついていました。
「土器は何に使うの?」
との質問がありましたが、内側を見て納得してもらいました。そう、お鍋です。時代が新しくなると、食べ物を盛るためや液体を入れるため、など様々な用途の土器も作られますが、多くは鍋として使われていました。

火で焼くだけでなく、「煮て」食べられるようになったおかげで、硬い植物なども柔らかくできるようになり、食用にできるものが多くなりました。「土器の発明」は人類にとって、大発明!だったんです。土器、すごい!

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手前に白っぽく見えるのはおよそ5,500年前に十和田の火山から飛んできた火山灰です。このような火山灰があると、考古学者は大助かり。火山灰に覆われた住居や穴は噴火の時期より古い、ということがわかるからです。

文字で書かれた資料が少なかったり、そもそも文字のない時代を対象とすることの多い考古学では、このような火山灰が年代を決める大切なものさしとなります。

太田林遺跡の発掘調査は、来年度も行われる予定です。

 

 

 

 

 

 

2022年11月25日掲載

※このホームページは公益財団法人岩手県文化振興事業団埋蔵文化財センターが、調査した遺跡の情報を提供しています。 掲載されている情報の無断転載はできません。

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